科学の美 芸術の方程式
鹿野護(アートディレクター)×萩原哲(ピアニスト/大阪大学・理学)


我々は日頃、見えないところで科学技術の恩恵に与っていますが、科学の役割は「役に立つ」だけではありません。私たちは科学によって数億光年の彼方や肉眼では見えないミクロの世界の中に息をのむような美を発見することができます。この点からみれば、科学はむしろ芸術や宗教と近いものとなります。
かつて、アルタミラの洞窟の壁面に我々の遠い祖先たちが、彼らが目にした動物を書き付けたとき、彼らは自らの認識を形にしたわけですが、これは科学だったのでしょうか、芸術だったのでしょうか? 近年はコンピューターの発達により、無機的な数式が命を得たように動き出す、ということも経験できるようになりました。しかし、我々はなぜこういった科学に美を感じるのでしょうか? 今回は「芸術と科学」の関係から科学の持つ可能性について話し合ってみたいと思います。
日時:2010年3月14日(日) 18:00~20:00
場所:アップルストア銀座 3Fシアター
ゲスト:鹿野護(アートディレクター)
荻原哲(ピアニスト/分子細胞生物学者/大阪大学大学院理学研究科教授)
主催:大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)
共催:アップルストア銀座
企画:CSCDワーキングメンバー(小林傳司・木ノ下智恵子・久保田テツ・仲谷美江)
協力:NPO recip [地域文化に関する情報とプロジェクト]
*ゲストプロフィール*
鹿野護(アートディレクター)
WOWではインターフェイスのデザインを中心に、様々なコンピュータグラフィックス作品に携わる。その一方で、個人的な表現活動を自身のウェブサイト「未来派図画工作」で展開中。配布を前提とした映像作品の公開や、海外のデザイナーとの共同プロジェクトにも多数参加。最近ではワークショップやインスタレーション作品の展示も手掛けている。著作「Quartz Composer Book」(BNN出版)。 WOW/映像プロダクション。実験的なメディアアート作品の制作から、海外でのインスタレーションやインターフェイスデザインまで、様々な表現活動に携わる。DVDの発売やウェブサイトの公開、自主制作プロジェクトを積極的に行っている。(BNN出版「Quartz Composer Book」より抜粋)
荻原哲(ピアニスト/分子細胞生物学者/大阪大学大学院理学 研究科教授)
国際基督教大学・大阪大学大学院・アルバートアインシュタイン医科大学を経て現職。理学博士。団塊世代の毒を撒き知らしているかもしれない。いのちの最小単位(生きている 状態の)である細胞。その動き(運動)を研究してきた。細胞という微細な構造の動きへの興味は音楽 という微細な音が寄り集まって作り上げる構造への興味と、ともに時間性/幾何学性を持つ現 象という意味で自分のなかではシームレスに繋がっていると思える。形は音を作らないし、音は形を作らないが。No Music No Lifeも真なりで、研究と音楽を行ったり来たりすることで、どちら の住人でもある自分を楽しんでいる。ピアニスト活動は退職後に大ブレークするか?